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2007年9月29日 (土)
■ 村上春樹作品における小便シーンの研究2
「1973年のピンボール」 新潮文庫(旧版) p.66
双子がぐっすりと眠った後で僕は目覚めた。午前三時。不自然なほど明るい秋の月が便所の窓から見えた。台所の流しの端に腰をかけ水道の水を二杯のみ、ガステーブルで煙草に火を点ける。月明かりに照らし出されたゴルフ場の芝では何千匹という秋の虫が折り重なるように鳴き続けている。
双子と暮らす温もりの中ですら癒すことのできない喪失感。
ある季節の終わり。
便所の窓から見える月がこんなに物寂しいものだとは……。
この時期に読むとますます切なさがつのります。
投稿者 yone : 2007年9月29日 20:18